こんにちは迅です。
この回を一行で言うと「AIの限界は熱で、答えが光」です。
光の技術と聞くと、多くの人が通信の話だと思います。光回線、光ファイバー。ただ、それだと2026年に起きていることの本質を見誤ります。いま光が主役になっているのは通信の話ではなく、AIの熱と電力の話です。この講座では全5回で、AIの配線が銅から光へ作り替えられていく構造を、一次情報の数字だけで読み解いていきます。
熱はどこから来るのか
スマホの充電器を思い出してください。充電中、手で触ると温かい。あれが今日の主役です。
銅に電気を流すと、必ず熱が出ます。物理の法則なので、例外がありません。そして速く送るほど、遠くへ送るほど、熱は増えます。スマホ1台なら「温かいな」で済む話が、GPUを数十万個つないだAIデータセンターでは計算の上限そのものを決める壁になります。
どれくらい深刻か。イーロン・マスクが宇宙データセンター構想を語ったとき、こんな比喩を使いました。ラック1つが2トンだとすると、そのうち1.95トンはおそらく冷却のためだ、と。計算機だと思っていた箱の中身が、実はほとんど冷却装置なのです。
ここで発想が変わります。冷やす前に、熱そのものを消せないか。
光子は熱を出さない
答えが光です。光子は電子と違って、運んでも熱がほとんど出ません。消費電力で比べると、光子は電子の5分の1から20分の1。距離が伸びるほど、この差は開きます。
だから接続の距離で見ると、光への切り替わりには順番があります。チップとチップの間のような近距離なら、まだ銅で足ります。ラックとラックの間になると、スイッチで中継してしのぐ。ところがデータセンター同士をつなぐ距離になると、もう光しか選べません。そしてジェンスン・ファンが語る「都市、国、大陸をまたいでデータセンターをつなぎ、ギガワット級のAIファクトリーにする」という構想の世界ではすべてが光になります。
彼の言葉を借りれば、「数十万、数百万のプロセッサをつなぐ。近くなら電気でいい。だが遠くをつなぐ唯一の方法はシリコンフォトニクス、つまり光だ」。
5,000本の銅の束
これが構想ではなく実務の話であることを示す数字があります。NVIDIAの最新世代システムVera Rubinの内部には全長2マイル、約5,000本の銅ケーブルが束になって入っています。GPUを増やすほど、この銅の束は発熱と遅延の塊に変わっていきます。
NVIDIAの戦略はこの束を丸ごとガラス繊維へ置き換えることです。その受け皿として、光ファイバーのCorningと長期提携を結び、米国内の光接続の製造能力を10倍にする計画まで動いています。
配線の置き換えはケーブルの交換という小さな話ではありません。銅の世界で稼いでいた会社から、光の世界で稼ぐ会社へ、需要が会社ごと置き換わるという話です。
僕の見立て
光への移行を「新技術のブーム」と読むと、波が引いたときに揺らぎます。そうではなく「物理の限界による強制的な切り替え」と読むのが正確です。ブームは終わりますが、物理は終わりません。電気は物理世界の限界にぶつかり、強制的に光へ切り替わっていく。この一文が、全5回の土台になります。
次回、この切り替えが2026年に「発表」から「出荷」へ変わった証拠を、4つの事実で確認します。
深掘り|お金の流れで、裏を取る
物理の話はここまでにして、最後にお金で裏を取ります。技術の必然は資金の流れと一致して初めて投資テーマになるからです。
まず需要側。Microsoft・Google・NVIDIA・AWSの4社の設備投資は2025年の3,800億ドルから2026年に6,500億ドル、日本円で約100兆円規模へ増える見通しが示されています。この巨額のお金の行き先としてよく語られるのがGPUですが、実際にはその手前の「つなぐ部品」にも流れ込みます。
市場の見立ても出ています。光AI関連の市場規模は2025年の180億ドルから、2030年には900億ドルへ、5年で5倍という予測です。
そして現場の言葉。光部品大手CoherentのCEOは今年の春、こう語っていました。「電気はいずれ物理の限界にぶつかり、強制的に光に切り替わる。だから今年、リン化インジウムの生産能力を倍に増やす」。物理の必然を、当事者が設備投資の理由として語っている。この一致が確認できたら、テーマとしては本物だと僕は判断します。
この発言の続きに何が起きたかは第4回でお話しします。少しだけ予告すると、90日後、同じCEOの言葉が正反対に変わりました。
それでは第2回でお会いしましょう。
会員限定資料(コミュニティで配布):この回の数字をまとめた「更新式・接続の数字表」を配布しています。接続部品の投資比率(15%→30%)などの数字は決算のたびに改訂し、改訂履歴付きで資料庫に置きます。教科書は買い切りではなく、更新されるものとして運用します。
この回の資料(数字・出典入りの完全版)
スライドは決算のたびに数字を改訂します(現行 v1・2026年7月版)。






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※本記事は情報提供・教育を目的としており、個別銘柄の売買を推奨するものではありません。記載の数値・計画・提携内容は発表後に変更される可能性があります。投資の判断はご自身の責任でお願いします。
第2回から先は、AI企業ラボの中で公開しています
この続きでは、銅から光へ移る過程で、誰が部材を握って利益を取るのかを企業ごとに見ます。ラボでは企業完全解説53本に加えて、決算が出た当日に速報を届けています。
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